窪田織物の18マルキ


 

「世界最小絣」本場大島紬 32算 18マルキ

 

※「算」(よみ)…全ての糸の数

 

“無価優粋大島紬”

 

(当時、製作に関わった方の文章です)

計画発表から5年「やるぞ」と心に決めてからスタッフを結成、今日まで長い道のりでした。

まず、失敗しそうな問題点などを想定してピックアップすることから始まり、ありとあらゆる方法を考え、クリアしていきます。

それは図案から織り迄40工程以上あり、気の休まらない日々でした。

 

第一に我社の特徴として、高い技術を発揮できる多数の職人さん達を生かすため、人選から進めて行きました。

図案に始まり整糸・染色・締・加工・織りのチームを作りました。

 

図案はどんな柄・色構成で表現するか。また製作過程で失敗のない図案にするなど、みんなで考え約6ヶ月かけて完成させました。

次に、糸が細くなるため強度・やわらかさ・色合いなどを慎重に検討しました。

 

そして締は糸の細さで力の配分や、間を空けると締の強弱が出過ぎるため席を立てないなど、苦労ばかりでした。

 

加工に入ると、糸の細さがもう目に入らないくらいに色を塗るのに困難を極め、通常1ヶ月半くらいの作業を4ヶ月もかかってしまいました。

 

最終段階の織り。もし織ることができなければ今までの苦労が水の泡です。

前準備を念入りに、議論をし尽くし織りに入りました。

 

アゼが開かない、織りヒ(緯糸のシャトル)が通らない、絣が見えないなど苦労の連続でした。

絣の0.01mmを見つめる目は精神力だけでは通用せず、充血して痛々しい限りでした。

そのために1日にわずか3~4cm程しか織ることができません。

 

だめでも仕方のない挑戦でしたが、成功を目指して

ひたすら各職人さんをサポートし続けました。

 

糸の密度・絣の細さなどから見ても「世界最小絣」の織物。

織りあがりには全員が集まり、その時は喜びよりも先に安堵のため息が出ました。

持ってみるとふわりとした感触で、いい品は軽いと言いますがそれは本当だと実感しました。

 

そして価値を計ることができぬほどの大島紬という意味を込めて「無価優粋大島紬」と命名しました。

誰でもは作れない、誰でもは織れない技術、完成までに至った職人の本能が宿っています。

 

平成20年12月

監督 窪田 優粋

図案 山野 哲次

整糸 松本 久明

染色 窪田 政幸

締め 竹山 南海男

加工 安田 清信

織り 竹山 南海男